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★プーチン新政権の国防トップの顔ぶれ

今月からロシアではプーチン2.0政権が成立しました。
というわけで国防トップ人事の主なところを簡単にご紹介。

★国防相 アナトリー・セルジュコフ(留任)
2007年に任命され、メドヴェージェフ政権下で軍改革を強力に推し進めた。昨年末には解任報道があったものの、蓋を開けてみると留任。ブログ「Russian Defense Policy」によると、セルジュコフの退任は本当に規定路線で、パトルシェフ安保会議書記がチェメゾフ・ロステフノロギヤ会長、ポポフキン・ロスコスモス総裁、ロゴジン副首相の三人を候補に後継人事を進めていたという。しかし前二者はプーチンのお眼鏡に適わず、ロゴジンは副首相に就任したばかりであったことから、結局セルジュコフが留任した、ということらしい。
ただし、セルジュコフは決して無能であったから解任されそうになったわけではなく、軍改革を進める過程でいろいろと軍内の恨みを買いすぎたというところであろう。と考えるなら、留任したとはいえ、遠からず後任人事の話は出てきそうである。

★参謀総長 ニコライ・マカロフ上級大将(留任)
セルジュコフと同じく解任説があったが、結局、留任した。セルジュコフとコンビを組んで軍改革を進めたが、そのせいで身内からは随分嫌われたようだ。昨年、参謀本部作戦総局長など3人の若手将軍が突然辞任したのも、マカロフの改革方針に対する不満からであると言われる。マカロフはすでに一度定年を延長しているので、やはり現在のポストにはそう長くは留まらないと思われる。昨年末の段階では、後任に内務省国内軍のロゴシュキン総司令官という話もあったようだが、これはロゴシュキンのほうで断ったようだ(本ブログ4月2日のエントリ参照)。

★陸軍総司令官 ウラジーミル・チルキン大将(新任)
前陸軍総司令官ポストニコフ大将の後任として今年4月26日に就任。56歳。偵察中隊からキャリアをスタートし、自動車化歩兵師団長、第58軍参謀長、第36軍司令官、シベリア軍管区司令官、中央軍管区司令官などを経て現職。参謀本部の勤務経験はなく、一貫して現場指揮官として歩んできた人のようだ。この辺は前任のポストニコフ司令官と似ていて、顔の怖さもそっくりである。

★空軍総司令官 ヴィクトル・ボンダレーエフ少将(新任)
今年5月6日に就任。53歳。攻撃機パイロット出身でアフガニスタン戦争に従軍したほか、第899親衛攻撃機連隊を指揮して第1次および第2次チェチェン戦争に参加した。その後、第14航空軍副司令官、同軍司令官、空軍参謀長などを経て現職。まだ若い上、まだ少将の階級で総司令官というのが凄い。

★海軍総司令官 ヴィクトル・チルコフ中将(新任)
今年5月に就任。52歳。大型対潜艦「アドミラル・スピリドノフ」艦長、大型対潜艦旅団長、バルト艦隊参謀長、同艦隊司令官などを経て現職。3人の総司令官の中で一番イケメン(個人的感想による)。前任のヴィソツキー海軍総司令官は海軍総司令部のサンクトペテルブルグへの移転に強固に反対しており、このために更迭されたらしい。この問題に対するチルコフ中将の出方は不明だが、わざわざ移転反対派を任命するとも思えず、おそらくは近いうちに移転に向けた動きが始まるのではないだろうか。


というわけで、トップは留任したものの遠からず交代の公算高し。三軍総司令官はプーチン就任前に総取替えで若返り、というのが今回の人事の主な特徴として挙げられよう。
本当は戦略ロケット軍、航空宇宙防衛軍、空挺軍の3独立兵科についても書きたかったのだが、この辺で力尽きたのでひとまず。
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★2012年の国家国防発注

先日、ロシア国防省のスホルコフ第一国防次官が実施したブリーフィングで2012年度の装備調達(GOZ)に関する情報が出てきたので以下にまとめ。

★2012年度の国防省向けGOZ予算は6774億ルーブル
★4月15日の時点で、契約が結ばれたのは5207億ルーブル分(全体の約77%)
★これは「4月15日までにすべてのGOZを締結する」とした以前の目標には届かないものの、前年度あるいは前々年度の同時期における契約締結率(それぞれ50%と47%)と比べれば改善されている
★従来、2012年度のGOZ予算は7040億ルーブルになるはずだったが、250億ルーブル分削減された。ただし調達契約には変更はない
★締結済みの契約のうち、全GOZ予算の57%にあたる3865億ルーブルが前払いされる(。。。という理解でよろしいでしょうか?原文は "По условиям заключённых контрактов выплачено 386,5 млрд. рублей, что составляет 57% от общего объёма ассигнований на ГОЗ-2012. Этого результата удалось достичь за счёт распространения практики стопроцентного авансирования заключённых контрактов."なんですが自信がないのでどなたかご教示を頂ければ幸いです)

というわけで、全体的な状況としては、期限内の全GOZ締結はできなかったものの、昨年度以前よりはマシな状況である、といったところであろうか。
それにしてもこの記事のタイトルは「2012年のGOZはすべて予定通り」。
軍の機関紙「赤い星」だから仕方ないのかもしれないが、2割以上も契約の遅れた案件があるんじゃ全然「予定通り」じゃないだろう(笑)。

GOZの具体的な中身については、「RIAノーヴォスチ」のこちらの記事が詳しい。
これによると、昨年のGOZで大きな問題になったMIT(モスクワ熱技術研究所)から弾道ミサイル調達や、OAK(統一航空機製造会社)からの航空機調達に関しては今年は問題は発生していない。
一方、昨年は最後まで価格問題で折り合いがつかずに揉めた955型潜水艦については、今後の量産に向けた価格問題がまたぞろ持ち上がっているという。
記事(4月19日付)の中で、スホルコフ第一国防次官は、「来週には契約が結べるだろう」との見通しを述べているが、その「来週」は今秋の27日まで。
果たして価格問題で折り合いがつくのかどうか、注目していきたい。

なお、2012年の調達予定としては、「パンツィーリ」防空システム28基、航空機58機、ヘリコプター124機が予定されているという。こちらも果たして達成できるものかどうか動向が注目されよう。

★ロシア、「国家親衛隊」を創設へ?

『独立新聞』によると、ロシアに新たな軍事組織「国家親衛隊(ナツィオナーリナヤ・グヴァルディヤ:Национальная гвардия)」を創設しようという動きが出てきているらしい。
5月に大統領就任を控えたプーチン首相が進めている国防見直しの一環として創設されるものだという。
母体は内務省の国内軍だが、国家非常事態省や軍の一部(空挺軍や、創設されたばかりの憲兵隊〔約2万人〕も含む)などを含めて、35-40万人もの兵力を目指すという。うち約80%は契約軍人になるとも伝えている。

このような構想は1991-1992年のソ連崩壊前後や、2009-2010年の内務省改革の際にも唱えられたものであるという。
それが今になって現実味を帯びつつある背景として、『独立新聞』は、次の3点を挙げている。

①「アラブの春」の経験(政権を守るためにはまとまった数の特別部隊が必要)
②選挙前にロシア各地で発生した大規模抗議集会や北カフカスの治安悪化(現在の武力省庁のみでは全面的に対応しきれない)
③いくら軍を増強しても当面、軍が戦うべき強力な外的相違は存在しない。一方、実際に内的脅威に直面している内務省国内軍の兵力は18万2000人と、(戦う相手の居ない)陸軍の2/5でしかない。

さらに『独立新聞』紙は、「国家親衛隊」の創設と並行して軍上層部の大規模な入れ替えをプーチン首相が計画しているらしいと報じている。
同紙の情報によれば、プーチン首相は最近、ロゴシュキン国内軍総司令官に参謀総長就任を持ちかけていたが、ロゴシュキンは断ったという。
このため、参謀総長にはシャマノフ空挺軍司令官、国防省には現在のスホルコフ第一国防次官を充てるという構想だと『独立新聞』は伝えている。
この際、マカロフは国防省内の別の要職に配置換え(プーチンが幹部を更迭するときによく使う手だ)するというが、セルジュコフの処遇については言及が無い。

さらに『独立新聞』は、「国防会議」なる新たな組織体の設置についても言及している。
これが現行の安全保障会議を基盤としたものになるのか、全く別の組織体となるのか、誰が率いるのかについては現時点では不明だとしているが、以上の内容が事実だとすれば、5月以降、ロシアの国防・安全保障は大きな変動の季節を迎えることになろう。

プーチン国防論文②「新しい脅威に対する”スマートな”国防」

前回に引き続き、プーチンの国防に関する論文の翻訳を掲載します。
今回は「新しい脅威に対する”スマートな”国防」と題されたパートで、現代の戦略的環境に関するプーチンの分析と、これに対して軍や軍需産業を発展させていく必要性が説かれています。


-------------------------------------------以下、翻訳--------------------------------------------------


新しい脅威に対する「スマートな」国防

現に存在している以外の危険にも対処できるメカニズムが必要だ。「地平線を越えて見通すこと」、すなわち30-50年先の脅威の性質を評価できるようにせねばならない。これは切実な課題であり、軍事・非軍事の学問的可能性と長期予測のための適切なアルゴリズムを動員すべきものである。

ロシア軍にはいかなる兵器が必要か。我が国の軍需産業コンプレクスに対していかなる技術的要求が持ち上がってくるか。軍事的な分析を行い、戦略的計画を立案し、「処方箋」を決め、それらを我が国の武力機関において適時に実施するために、新たに高度かつ「スマートな」システムを設立する必要がある。

「来るべき世紀」に我々を待ち受けているものは何であろうか。

核保有国同士によるグローバルな核戦争の蓋然性は高くないし、そのような事態は文明の終焉を意味することになろう。我々の父や祖父たちがとてつもない努力によって作り上げた核の「弾薬庫」は今や「干上がって」いるものの、誰も我々に対して広範かつ大規模な侵略を仕掛けようとはしていない。

しかしながら、新型兵器・軍事技術から情報通信技術に至るまでの広範な領域における科学技術の進歩が、軍事紛争の質的変化をもたらしていることには注意を払わねばならない。高精度の長射程非核兵器を大量使用することにより、これらの兵器が紛争(グローバルな紛争を含む)に勝利する上での決戦兵器として確固たるものになる傾向がますます顕著になっていくだろう。

宇宙空間および情報戦の領域(第一義的にはサイバー戦)における軍事的能力は、軍事紛争の性質を手意義付けるにあたって、決定的ではないかもしれないが大きな意義を持つことになろう。そしてさらに遠い未来には、新たな物理的原則に基づく兵器(放射線、地球物理、ビーム、遺伝子、心理その他)がこのような意義を持つことになるだろう。これらは全て、核兵器と並んで政治的・戦略的目的を達成するための質的に新しい手段となりうるものだ。このような兵器システムは核兵器の使用に匹敵する結果をもたらしうるが、政治的・軍事的計画においてはより「受け入れられやすい」。したがって、侵略や無秩序を抑止する上で戦略核のバランスが果たす役割は恒常的に低下していくことだろう。

我々の眼前では、あらゆる新しい地域紛争と極地紛争が燃え盛っている。不安定で、人工的に煽られ、人為的に無秩序状態にされた地域が出現している。しかもロシアやその同盟国の国境とすぐ隣り合う地域において、特定の目的のためにこのような紛争を焚きつける企てが見られる。我々は、国際法の基礎が損なわれ、破壊されつつあると見ている。特に国際安全保障の領域がそうだ。

このような条件下では、我々は矛盾の除去と紛争解決のための手段として、外交的・経済的手段にのみ頼るわけにはいかない。抑止戦略の枠内において、防衛上の十分性を満たすレベルで軍事的ポテンシャルを発展させるという課題が、我が国の前には存在しているのである。そして軍、特殊機関、その他の軍事組織は、新たな事態に対して迅速かつ効果的に対処できるよう準備ができていなければならない。これは、ロシアが危険にさらされておらず、自らの主張が様々な枠組みにおけるパートナー諸国に受け入れられていると実感するために不可欠の条件である。

我々はまた、同盟諸国とともに集団安全保障条約機構(CSTO)を強化してゆかねばならない。ここには(CSTOの)緊急対応部隊も含まれる。CSTOはユーラシア空間における安定性確保という任務を果たす用意ができている。

軍隊・原子力および宇宙産業、軍需産業コンプレクス、軍事教育、基礎軍事科学、応用研究プログラムのダイナミックな発展を確実なものとすることは、将来におけるロシアの最重要国家政策である。


--------------------------------------------以上、翻訳-------------------------------------------------


次回は「軍がロシアを守る」というパートを掲載します。

プーチンの国防論文①全般認識

去る2月20日、ロシアのプーチン首相が国営紙「ラシースカヤ・ガゼッタ」に、「強くあれ:ロシアのたしかな国家安全保障」と題した長文の論文を掲載しました。
3月4日に迫った大統領選ではプーチン首相の大統領復帰が公算大と見られていますが、第二次プーチン政権の国防・安全保障政策の方向性を考える上で、この論文は重要な手掛かりになるものと思います。
この論文の意義に関する解説記事は『軍事研究』誌等で書いていく予定ですが、まずは内容把握が先ということで、各セクションごとにぽちぽちと全訳して公開していくことにしました(計7回となる予定)。
まずは最初の全般的状況認識についてのパートを以下に訳出します。

--------------------------------------以下、翻訳------------------------------------------------------


世界は変化している。そこにおいて進行中のグローバルな変革プロセスは、最も広範で、ときに予測不可能なリスクを秘めている。世界経済その他が衝撃を受けている状況下にあっては、力による圧迫の下に他者を犠牲にして自らの問題を解決しようという誘惑が常に存在するものだ。すでに「国家主権はグローバルな意義を持つ資源にまで及ぼされるべきでない」などいう "客観的な"問題提起の声がときおり上がっている。

たとえ仮の可能性であったとしても、ロシアに関してはこのようなことはあってはならない。つまり、我々は何人をも自分の都合でそそのかしてはならないということだ。

だからこそ、このような条件が満たされないかぎり、我々は戦略的抑止力のポテンシャルを放棄することはないし、それを強化していくだろう。我々が1990年代の困難な環境下で国家主権を維持できたのはまさに戦略的抑止力のおかげであった。率直に言って、我々は重みを持ちうる根拠を他に持ち合わせていなかったのだ。

ロシアが安泰でない限り―――つまり、紛争の発生リスクを検討せず、軍事・技術上の独立性を確保せず、あらゆる挑戦に対する優れた適切な対抗策を講じなければ―――国際的な地位を強化したり、経済や民主的な制度を発展させていくのが不可能であることは明らかである。

我々は、軍の発展とロシアの軍需産業の近代化に関する過去に例を見ないプログラムを採択し、実施中である。来る10年間で、この目的のために全体として23兆ルーブルが支出される。

その額を幾らぐらいにするのか、そしてこれほどの支出を今行う必要性があるのかについて、多くの論争があったことを隠すつもりはない。この支出は、国家の能力と資源の観点からまったく適切なものであったと確信している。重要なことは、近代的な軍隊の設立と国防ポテンシャルの複合的な強化という課題の解決は、遅らせるわけにはいかないということだ。

これはロシアの予算を軍事化しようという話ではない。要はこういうことだ。我々が支出しようとしている予算は、我が軍への予算手当が歴史的に少なく、実質的に新型兵器の購入が行われていなかった年月の「ツケを支払う」ためのものなのである。この間、他国は一貫して自国の「軍事的な筋肉」をつけていたのである。


-------------------------------------以上、翻訳-------------------------------------------------------


次は「新しい脅威に対する"スマートな"国防」というパートの訳を掲載します。
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