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岐路に立つロシアの徴兵制

ロシアの徴兵制について、個人的な覚書まで。

ロシアが依然として徴兵制を持っていることは有名ですが、これは即応性や錬度の観点から言えば難があるシステムと言えます。志願制の軍隊と較べると、全体に占める新兵の割合が常に高く、逆に熟練した兵士は少ないためです。
数百万人規模の兵力を動員して全面戦争をやる可能性があった時代ならば、そのデメリットをしのんでも徴兵制を維持するメリットはあったと思われますが、ロシア軍が兵力のコンパクト化を目指している現在では、あまり意味はないと言えます。
こういった軍事的な観点と、国民世論などもあって、ロシア政府は徴兵制を段階的に縮小してゆく意向を示しています(ただし完全廃止とは言っていない)。代わりに契約軍人(志願兵)を増やし、軍のプロフェッショナル化を進めることが軍改革の重要課題の一つになっています。

しかし現在のところ、このような目標はまったく達成の目途が立っていません。
セルジュコフ国防相によれば、現在、契約軍人は15万人程度しかおらず、近い将来においても20-25万人程度までしか増やせない見込みです。ロシア軍の兵力は2016年までに100万人(うち士官15万人、下士官約8万人)となる予定ですが、仮に契約軍人を最大限の25万人まで増やせても、残りの53万人分は徴兵に頼るしかない、ということになります。

しかも、2008年に徴兵期間が従来の2年から1年へと短縮された結果、徴兵される人数はさらに拡大する傾向にあります。徴兵期間が半分になった以上、同じ兵力を賄おうとすれば、徴兵人数を倍にするしかないわけです。
実際には契約軍人が入ってきたり総兵力が減ったりしているので、それほど単純ではないですが、とにかくより多くの徴兵が必要になっているのは事実です。
たとえば、この文書のp58を見てみると、1998-2003年の徴兵人数が出ています。
最多は1997年の約40万人で、それ以降は概ね30万人台で推移しています。
その後は兵力削減の効果もあって、徴兵人数はさらに減少傾向にあります。一例として、2007年の徴兵人数を挙げてみると、以下の通り、26万6000人程度まで減少しています(数字は大統領令より)。

2007年
 春季:13万3500人
 秋季:13万2350人
 合計:26万5850人

ところが、2008年に徴兵期間が短縮されると、この数字が35万人まで一気に跳ね上がり、2009年には2007年の倍以上にあたる約57万人に達しました。2010年春季にもすでに27万人(これだけで2007年度全体に匹敵する)が徴兵されており、秋季徴兵も合わせれば、やはり50万人台後半に達するものと思われます。

2008年
 春季:13万3200人
 秋季:21万9000人
 合計:35万2200人
2009年
 春季:30万500人
 秋季:27万1000人
 合計:57万1500人
2010年
 春季:27万600人
 秋季:未定

前述のように、今後も50万人以上の徴兵が必要になることは確実なので、おそらくは春・秋でそれぞれ26-7万人程度を徴兵する体制が続いて行くことになるでしょう。

しかし、人口減少が進む中でこれだけの徴兵を維持するのは容易ではなく、すでに徴兵免除枠が縮小され始めているほか、徴兵対象年齢の上限を現在の27歳から30歳まで拡大することや、徴兵期間を延長することもありうるとスミルノフ組織・動員局長が発言し、大きな波紋を呼んでいます(徴兵期間延長については、後に参謀本部が正式に否定)。


私の個人的な感想としては、やっぱり1年間の徴兵という中途半端な政策に問題があったのだと思っています。
こういう事態になるのは分かり切っていたはずだし、軍事的に見ても1年はあまりに短い(大部分の兵士は数カ月の軍務経験しかないことになる)からです。
かといって、今更徴兵期間を延ばすというのも、政治的には自殺行為と思われます。
軍は、徴兵については北カフカスの危険地帯には送らず、出身地から比較的近所の駐屯地へ送るなどの配慮を見せているようですが、だからと言ってやっぱりみんな軍隊に行くのは嫌なわけで、それをやったら支持率低下は必至でしょう。
じゃあどうするんだっつうと特に答えは無いんですが、本当にどうするんでしょう。

何のオチもないんですが、あくまでも「覚書」ということで。
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