★黒海艦隊増強計画について

10月27日、ヴィソツキー海軍総司令官は、2020年までに黒海艦隊に18隻の新型艦を配備するとの意向を示した。
現在、黒海艦隊には約40隻の艦艇が在籍しているが、老朽化が著しく、作戦可能状態にあるのは20隻のみであるという。

ヴィソツキー司令官によれば、配備されるのは、6隻のフリゲート、6隻のディーゼル・エレクトリック潜水艦、2隻の大型揚陸艦であるという(残る4隻が何であるかは明らかにされていない)。
フリゲートはインド向けのタルワー級をロシア海軍向けに改修した11356型、潜水艦は636型(いわゆるキロ級)。フリゲートは2013年以降毎年1-2隻ずつ配備する予定で、11月には1番艦が起工される。潜水艦の方はすでに1番艦が機構済み。揚陸艦については明言されていないが、おそらく建造中のイワン・グレン型ではないだろうか。
*黒海艦隊向けのフリゲートとイワン・グレン級揚陸艦については以前のエントリを参照

また、同記事中では匿名の談話として、同艦隊に所属する海軍航空隊のSu-24戦闘爆撃機が近代化改修を受けるほか、旧式化したBe-12対潜飛行艇が退役して代わりにIl-38が配備されるとしている(Il-38も近代化しないと相当に厳しいとは思うが)。

こうした増強計画はグルジア戦争後から持ち上がっていたものだが、ウクライナの政権交代によって黒海艦隊の駐留延長(2042年まで)が決まったことも大きな追い風になったと思われる。
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★ロシアの武器輸出額100億ドル越えへ

★ロシアの武器輸出総額は100億ドル越えの見込み
10月28日、ロシアの連邦軍事技術協力庁(FSVTS)は、2010年度の武器輸出総額が100億ドルを上回る見込みであると発表した。以前、同庁のドミトリエフ長官は今年の売り上げを95億ドル程度としていたので、上方修正した形だ。
また、同じ日に国営武器輸出公社「ロスアバルンエクスポルト(ROE)」のイサイキン総裁が述べたところによれば、ROEの売り上げは年平均5~7億ドルずつ増加しており、10年前と較べて倍増しているという。

★2010年度の主な契約
Lenta.ruによれば、今年結ばれた主要な武器輸出契約は次の通り。ただし、これは航空・防空兵器に限ったリストのようだ。また、あくまで「契約」のリストであり、2010年中に実際に納入された兵器を示すものではない(納入ベースでのデータもいずれ作りたいと思っています)。
・リビア:Yak-130練習機×9機
・インド:MiG-29艦上戦闘機×29機
・アルゼンチン:Mi-171Eヘリ
・ウガンダ:Su-30MK2戦闘爆撃機×6機

このほかに、合意が固まっている契約として、以下のようなものがある。
・ヴェトナム:Su-30MK2戦闘爆撃機×32機
・ポーランド:Mi-17ヘリ×5機
・アルジェリア:「パンツィールS-1」防空システム×38基

以上のように、今年も中国との大型契約は結ばれなかった。
もともと取引関係のほとんどなかった陸戦兵器はもちろん、最大の売れ筋商品であった航空・防空兵器でも新規契約がなくなったことは注目に値する。Su-27のコピー問題や、中国自身が武器市場におけるロシアのライバルへと成長しつつあることなどが背景にあると考えられよう。たとえばスホーイとミコヤンの社長を兼任するミハイル・ポゴシャンは、今年5月、中国とパキスタンが共同開発したFC-1/JF-17戦闘機がMiG-29と競合するとして、同戦闘機向けにRD-93エンジンを供与することに難色を示している。

一方、ヴェトナムが32機ものSu-30戦闘爆撃機導入を計画していることも気になる。同国はすでにロシアからキロ級潜水艦を購入する予定であるほか、モルニヤ級ミサイル艇のライセンス生産も開始しており、中国の軍拡に対抗する意図があると見られる。
インドネシアがロシア製戦闘機の大量購入を計画していることとも併せて、中国の軍拡が東南アジアに対抗軍拡を引き起こしつつあるらしいのが少し不気味だ。

★2010年度秋季徴兵概観

先日のエントリでロシアにおける契約軍人制への移行が大幅に後退しているとお伝えした。
契約軍人(志願兵)が減少すれば、当然、その分は徴兵で補う必要がある。
さらに2008年から徴兵期間が1年間に短縮されたこともあり、徴兵人数は増加傾向にある。

2010年に関して言えば、春季徴兵が27万600人で、9月に行われた秋季徴兵が27万8800人であった。
合計で54万9400人である。
57万1500人であった2009年度よりは2万2000人ほど少ないが、35万2200人の2008年度よりは大幅に増えている。

これだけの人数を集めるとなると、これまでは徴兵を免除されていた層(大学生など)や徴兵逃れをしていた層にも徴兵に応じてもらう必要が出てくる。
そのため、今回の秋季徴兵では、次のような新機軸が打ち出された。

★徴兵対象者の両親が徴兵検査に立ち会えるほか、勤務地に関する情報を得ることができる
★訓練期間中は自宅付近に配置される
★週5日勤務と食後の休憩の義務化
★兵士の権利を保護する観察官の導入
★調理・洗濯業務の免除
★携帯電話の使用を許可(内規により制限を受ける場合あり)

全体的に、軍隊内でのいじめ対策や生活環境の向上をアピールしているようだ。
ただ、筆者の廻りで実際に徴兵に応じた人に話を聴くと、駐屯地内に売店が無く、厨房で供される食事(すごくまずい)以外には腹が減っても食べるものがないのがつらかったとこぼしていた。依然、決していい環境とは言えないのだろう(コンビニまである自衛隊の駐屯地を見せたら気絶するかもしれない)。
また、携帯電話は以前からみんなこっそり持ち込んで使っていたそうで、これを後追い的に追認したものとのようだ。

★インドネシア、露製戦闘機180機購入へ

9月30日、インドネシアのパルノモ・ユスジャントロ国防相が述べたところによると、インドネシアは今後15年間で180機のスホーイ戦闘機を購入する計画である。
同国防相の発言は、大要以下の通り。

★180機のスホーイ製戦闘機を導入し、10個飛行隊を編成する
★各飛行隊は18機を装備
★導入完了時期は2024年
★ロシア側からもインドネシアの需要を満たすだけの生産力はある旨の回答を得ているほか、インドネシアの経済力からしても購入は可能

ロシアは2003年に各2機のSu-27SKMとSu-30MKM、2008-09年に3機のSu-30MKMを納入しており、さらに今年9月16日には3機のSu-27SKMを納入した。これで、インドネシア空軍は合計10機のフランカー・シリーズを保有していることになる。
また、2003年に納入された4機の近代化改修計画が進められているほか、10月中にこれらの搭載ウェポンに関する契約もまとまる予定だという。

しかし、「これだけでは不足」という声は納入完了直後から聴こえていた。
たとえばスファアト・インドネシア空軍司令官は、最後の3機が納入された後の記者会見において、「現状の10機では不十分であり、1個飛行隊の定数である16機まで増やす」と発言している。つまりもう6機買い足す必要があるということだ。
同司令官によれば、この計画はユドヨノ大統領も承知しているとのことで、事実だとすれば6機の追加発注は確実のようだ。

しかし、その2週間後に行われたユスジャントロ国防相の上記発言はケタ外れである。
第一に、これまでインドネシア空軍の戦闘機戦力と言えば、前述のSu-27SKM/Su-30MKMと「旧式のアメリカ製F-16A/B併せて20機程度でしかなかった。
第二に、インドネシアの国防費は毎年50億ドル程度でしかないが、ジェーンズの推定によれば、180機のフランカーを導入するには約80億ドルを要する。もしも導入する機体を最新型のSu-35S等とするのであれば、費用はさらにかさむ。
さらに、インドネシアが何故、この時期に突如として大量の戦闘機整備を始めるのか、周辺諸国とのパワーバランスにいかなる影響を与えるのかなど、興味は尽きない。
今後の動向に注目していきたい。
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