★グルジアの軍事力再建について

『国防』誌8月号("Национальная оборона" No.8 (53) )に面白い記事が載っていた。2008年8月のグルジア紛争後に、グルジアが外国から購入した兵器のまとめである。
同記事によれば、グルジアへの武器移転は国連軍備管理制度によっても捕捉しきれておらず、グレーの部分が多いが、分かっているだけも以下のような武器が2008年8月以降にグルジアに引き渡されているという。


★ウクライナからの移転分(2008年8月~2009年)

 T-72戦車×10
 T-84U「オプロート」戦車×12(写真)
 BTR-70兵員輸送車×25
 BTR-80兵員輸送車×25
 BMP-2歩兵戦闘車×20
 「スメルチ」多連装ロケット・システム×3
 2S3「アカツィヤ」152mm榴弾砲×12
 「イグラ-1」地対空ミサイル発射機×50(+ミサイル400発)
 「ストレラ」地対空ミサイル発射機×40
 軍用ヘリ×10
(※2010年1月のヤヌコビッチ政権成立後、ウクライナの対グルジア武器供与は停止)


★ブルガリア(2009年分)

ブルガリアが直接販売した分
 D-20 122mm榴弾砲×12
 RM-70 122mm多連装ロケット・システム×12(写真)
ブルガリアの「アルセナル」社経由で販売された分(供給元不明)
 AKS-74自動小銃×5万
 RPG-7ロケット砲×1000(+ロケット弾2万発)
 5.56mm弾×1万5000


これに対して、グルジア紛争でグルジア軍が失ったとされる装備は次の通り。
 戦車×37(+鹵獲40)
 装甲車両×85(+鹵獲60)
 航空機×12
 ヘリコプター×28
 防空システム×32
 火砲×120
 自動車×85(+鹵獲40)
 小銃・機関銃×3700

したがって、上で挙げたウクライナとブルガリアからの供給分を合わせれば、概ね戦争で失った装備の1/4~1/2くらいは2009年中に回復してしまったということになる。2010年も何らかの形で武器調達を続けていた場合、すでに戦前に迫る勢いまで回復している可能性も否定できない。

さらにグルジア側が期待を寄せているのが、アメリカからの武器供与だ。
戦前、グルジアに対する最大の武器供給国がアメリカであったことは言うまでもないが、戦後の2009年9月にも「パトリオット」防空システムや「ジャベリン」対戦車ミサイルの供与を行うという話が持ち上がっていた。
ロシア空軍はグルジアがウクライナから購入した旧式防空システムにも苦戦していたので、「パトリオット」のような高性能防空システムが導入されれば大きな脅威となるだろう。
ただ、ロシアとの「リセット」を進めているアメリカは武器供与の再開に慎重な姿勢を示しており、この話はまだ具体化していない。

しかし、Eurasia.netが伝えたところによれば、グルジアはアメリカのロビー会社を雇って米国内の要路に武器供給再開を工作しているという。ロビー活動を行っているのは、マケイン上院議員と近しい関係にある「オリオン・ストラテジー」なる会社で、ジェネラル・ダイナミクス、AMジェネラル、コルト、アームズテックの4社が対象となっている由(ただし、アームズテックとコルトはこれを否定)。
9月にはグルジアのサーカシヴィリ大統領が「間もなくアメリカは武器供与を再開する」との見通しを示したが、こうした米国内での活動に何か手ごたえがあったのだろうか。
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