★2011年度以降のロシア国防予算の見通し

来月の『軍事研究』に詳しく書いたんですが、2010年度の軍事支出と2011-13年度の予定が発表されたので、簡単に。
ロシアの軍事予算はここ数年、内訳の詳細や正確な総額さえも予算案に記載されなくなっており、しかも予算法案成立後に財務省が歳出項目間で再配分を行えるようになったため、透明度が非常に下がっています(詳しくは以下を参照。塩原俊彦『「軍事大国」ロシアの虚実』)。

そんな中、毎年10月頃にザヴァルジン下院国防委員長(写真)が行うブリーフィングは貴重な情報源で、昨年度の軍事予算が実績ベースでいくら支出されたのか、その内訳はどうであったのか、今年度および来年度はどうなっているのか、などについてある程度の情報を得ることができます(あくまで「慣例」なので、政権の意向次第でいつでもシャット・アウトできてしまうという危うさはありますが)。
以下、同委員長の発言まとめ(註:同発言についてはいろいろ報道が出回っていますが、与党『統一ロシア』のサイトに掲載されている数字が細かいところまで省略されておらず、一番正確と思われます)。


★2010年度の国防予算
ザヴァルジン委員長によれば、2010年度の国防支出は約1兆2747億9400万ルーブル(約3兆5700億円)であった。
これは1兆2119億ルーブル(約3兆4000億円)あった2009年から3.4%(600億ルーブル弱)の増加にあたる。対GDP比は2.84%。
ただし、この額は予算法案における第2章「国防」の項目のみで、「軍人年金」や「その他の国防省向け支出」(住宅・保健・文化など)は含まれていないと思われる。
それぞれの実際の支出額は不明だが、昨年12月段階の予算法案では前者が1395億8200万ルーブル(約1499億円)、後者が1255億2400万ルーブル(約3500億円)であった。


★2011-13年度の国防予算(予定)
2011年度の国防予算は対前年度比19.28%増の1兆5206億1760万ルーブル(約4兆2580億円)となる見通し。対GDP費は3.01%。
2012年度はこれに1400億8050万ルーブル増(対前年比9.2%増)で対GDP比2.97%、2013年度はここからさらに4409億2580万ルーブル増(対前年度比26.6%増)で対GDP比3.39%となる見込み。

いずれにしてもすごい額だが、特に2013年が26.6%もの増額を予定しているのが注目される。
また、プーチン政権下では国防予算の対GDP比は概ね2.5%内外に固定されていたが、今次予算ではほぼ3%~3.4%まで達しているのも気になる。
おそらくは次に述べる国家国防発注費の増額が影響していると思われるが、このような高負担体質が今後も続いて行くのかどうかが焦点となろう。


★国家国防発注(GOZ)費
装備の調達・改修・修理、および研究開発(NIOKR)のために投じられるのがGOZである。これまでのGOZの推移については、CASTのフローロフがまとめたものがあるのでこちらを参照されたい(ちなみに彼とは今年の3月に会った。穏やかないい青年だ)。
一方、今年度から2013年までのGOZに関しては、ザヴァルジン委員長は次のような非常にもってまわった言い方をしている。

・2011年度のGOZ中、装備調達・修理(改修)費用は4596億7400万ルーブル(対前年度比約20%増)、2012年が5955億9140万ルーブル、2013年度が9800億6300万ルーブル。

・新規調達:修理(改修):NIOKRが全体の中に占める比率は、それぞれ以下の通り。

 2010年度 65:13:22 
 2011年度 64:15:20
 2012年度 66:15:18
 2013年度 70:14:16

2011-12年は合計が100にならないが、原文の通り記載した(他の報道でも同様)。それでも、新規調達を増加させつつ、代わりにNIOKRの比率を低下させ行く方針であることは読み取れよう。
ただ、ザヴァルジン委員長は、それぞれの額がいくらなのかについては触れていない。そこで次のような計算を行ってみた。

まず、装備調達+修理費用の合計額は判明しているので、2011年度分ならば、
x+y=4597
x:y=64/79:15/79
という連立方程式を立てることで、
x=3724
y=873
という解を得られる(X=調達費、y=修理・改修費、数字は四捨五入)。この調子でNIOKRも算出できるわけだ(多分)。
その結果が、以下のグラフである(筆者作成)。


(単位:10億ルーブル)

全体的に大幅な増加傾向にあることが分かると思う。また、NIOKRも相対的な比率が低下しているだけで、絶対額としては増加していることには注意したい。


ざっと以上のような具合です。
これ以上の詳しいことは『軍事研究』に書きましたので、発売になり次第お知らせします。
それにしても、「比の計算」なんて10年ぶりぐらいにやったので無闇に疲れました(笑)。
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