★2010年の露空軍調達実績とSu-30M2&Su-27SM3

モスクワ暮らしを始めてからすっかり愛読誌になってしまった航空雑誌Взлётの最新刊が手に入った(ちなみ同誌のサイトでもある程度、記事は読める)。
今月号は1-2月合併号で、特集が2010年度の民間機および軍用機生産実績。
とりあえずここでは軍用機の中の、ロシア空軍向け調達だけ抜き出して紹介しておきたい。

★2010年のロシア空軍調達

MiG-29SMT/UBM戦闘爆撃機...3機
Su-30M2戦闘爆撃機...4機
Su-34戦闘爆撃機...4機
Yak-130練習機...4機
                合計...15機

MiG-29SMT/UBMは、アルジェリアから返品されて引き取った34機のうち最後の3機。
31機はレーダーやIFFなどを再改修して就役したのだが、3機だけは間に合わなかったらしく、今年になって配備された。

一方、Su-30M2は輸出向けSu-30MK2戦闘爆撃機の露空軍向けとして導入されたもの。9月に初飛行したばかりなので、本当にすでに4機配備されているのかどうかはちょっと疑わしい(すでに実績のある機体だと言っても)。
Su-30M2は基本的に戦闘爆撃機だが、イリヤ・クラムニクの記事によるとSu-35Sの練習型とされており、筆者も今月の『軍事研究』
誌にそう書いた。
しかし、Взлётの記事によるとSu-30M2はむしろSu-27SM(Su-27の近代化改修型)とアヴィオニクスが共通化されており、両者をペアで運用する構想だという。ただし、練習機型なのか、指揮官機なのか、あるいは戦闘爆撃型として使うのかといった具体的なプランには触れていない。
さらに同記事によると、4機のSu-30Mのうち、2機は南部軍管区のクルィムスキー基地へ、2機は極東のジェムギ基地(Su-27SMが配備中)に配備された由。

ちなみに2009年度の調達は、前述した31機のMiG-29SMT/UBMを除くと、Su-34が2機(1機?)にYak-130が3機であったから、2010年の調達実績は対前年度比でかなり伸びている計算になる。


★Su-27SM3?
2011年度の調達に関してはここでは詳しく扱わないが、一点だけ特記しておくと、12機のSu-27SMの調達が始まった。
Su-27SMというのは既存のSu-27Sの近代化改修機であり、これまでは極東の2個戦闘機連隊に集中配備されてきた。しかし、今年から配備が始まるのはただのSM型ではなく、SM3と呼ばれるタイプであるようだ。配備先は前述のSu-30M2と同様、南部軍管区のクルィムスキー基地である。
Взлёт誌のWeb版限定記事によると、同基地には今月半ばに4機のSu-27SM3が配備されたという。今年中にさらに8機が納入され、12機体制となる見込み。

これまでのSu-27SMは既存機を近代化改修したものであったが、今回配備されたのは、中国向けに製作されたものの、ライセンス契約に移行したために不要になったSu-27SKの機体を流用したものであるという(たしかに写真を見るとピカピカだ)。
エンジンは通常型Su-27SMと同様のAL-31F-M1(推力13,500kg)だが、コクピットが完全グラスコクピット化されたほか、より進んだアヴィオニクスを搭載している由。
Взлётの記事はこれをSu-27SM3と呼んでおり、新型長射程ミサイル(KS-172)の発射能力を備えるという(昨年9月にNIIPティホミロフの社長にインタビューした際の情報が根拠)。

なお、Su-27SMシリーズにはSu-27SM2という案もあり、Su-35Sと同等のエンジンやアヴィオニクスを搭載するとされていたが、Su-27SM3がこれにとって代わったのか、それとも並行して改修・生産が続くのかは不明である。
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★ロシア軍が北方領土駐留兵力の増強へ その実態は?

今月10日、メドヴェージェフ大統領は北方領土訪問を終えたばかりのセルジュコフ国防相と会談した。
この会談の中で、メドヴェージェフ大統領は北方領土を「戦略的地域」と位置付けた上、その防衛のために最新兵器を配備するべきだとの見解を示した。


現在、北方領土に駐留しているのは第18機関銃・砲兵師団の約3500人と見られる。
名目上は3個連隊編成ということになっているようだが、事実上は1個旅団規模と見ていいだろう。
装備状態も劣悪で、去年までは依然としてT-55戦車を使用していたほか、装甲車はMT-LV、火砲に至っては何と1938年採用のM-30という博物館のような状態であった。
また、ソ連時代には択捉島のブレヴェストニク飛行場にMiG-23戦闘機がおよそ40機ほど駐留していたが、すでに全機撤退しており、現在は陸軍航空隊のヘリコプターや小型輸送機(An-72など)程度しか配備されていないと見られる。


しかし、択捉島の戦車部隊については昨年12月にT-80BVが配備されたと伝えられる。これも決して新型とは言えないが、T-55に較べれば、現代的戦車として最低限マトモな水準を満たしてはいる。
また、セルジュコフ国防相が前述の会談で述べたところでは、ブレヴェストニク飛行場を拡張してより大型の航空機が着陸できるようにするという。実現すれば、ロシア本土やサハリンから増援兵力を送り込む際や、逆に北方領土の兵力が他地域へ展開する上での大きなアドヴァンテージとなろう。
想定されている機種はロシア空軍の標準的な大型輸送機Il-76とされるので、その大規模改良型であるIl-476やひとまわり小さなAn-70(いずれも開発中)なら充分運用可能だろう。


今後のさらなる「増強」計画についてはまだ明らかでないが、筆者がフォローしている限りでは、次の四通りの見解が見られる。

①戦車はT-80BVのままで充分。その他の装甲車両を近代化(前極東軍管区司令官ユーリィ・ヤクボフ大将)
②S-400防空システム、「バスチョン」地対艦ミサイル・システム、Su-35S戦闘機などを配備(『国防』誌編集長イーゴリ・コロトチェンコ)
③S-400は配備しない。代わりに師団を旅団に改編(Interfax, 国防省および参謀本部情報筋の話として10日と15日に報じたもの)
④S-400を含む防空旅団を配備。第18は師団編成は維持し、旅団化はしない。兵力は3500人規模のまま(RIA Novosi, 参謀本部高官の談話として15日に報じたもの)

まぁ見事に錯綜している。
とりあえず、最も信憑性が高そうで、他の情報との矛盾が無いのは①だ。
とにかく第18師団の通常兵器は旧式化の極みに達している。最新鋭の兵器とはいわずとも、歩兵戦闘車ならBMP-2、火砲なら2S19などロシア軍で標準的に使用されている兵器の中から予備を支給してやるだけでかなりの近代化になるだろう(T-80BVの配備はまさにこうした発想に基づくものと言える)。


一方、ほとんど論外と言えるのが②だ。明らかに思いつく限りの最新兵器を適当に列挙しているだけで、根拠が稀薄いである。
こうなると、焦点は③と④であろう。S-400は配備されるのか?旅団化は実施されるのか?が今後の注目点となろう。
(個人的な感想としては、S-400の配備は怪しいと思う)


ただ、いずれの情報においても、爆撃機や弾道ミサイルなど、攻撃的な兵力を配備するという見解は見られない。また、②を除けば戦闘機部隊の再配備もやはり視野に入っていないようだ。
対岸に展開する自衛隊の戦力を考えれば、今回の「北方領土軍備増強」が軍事バランスに深刻な影響を及ぼすものとは考えにくい。
昨年末以降のメドヴェージェフ大統領以下政府高官の連続訪問と併せて考えれば、何らの政治的ショウ・アップの一環と考えたほうが筋は通るように思う。
まずは冷静にロシアの出方を見極めたい。

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★露軍将校の定員が7万人増加

今月2日、セルジュコフ国防相が述べたところによると、将校の定員が7万人分増やされることになった。
もともとロシア軍は総兵力の23%にも及ぶ35万5000人もの将校を抱えており、これを15万人まで削減してスリム化することがセルジュコフ改革の重要な柱だった(これに伴い、総兵力も100万人体制へ)。
だが、今回の発言が事実だとすれば、将校は22万人となり、削減は13万5000人分となる。
また、これによって総兵力が107万人になるのか、それとも100万人のままで変わらないのかは明らかでない。

定員増の理由として、セルジュコフ国防相は「防空と宇宙防衛を統合した新組織の設立に人員が必要なため」などと述べているが、『ロシア新聞』のガブリロフが述べているように、すでにベースとなる空軍や宇宙軍には充分な人員がいるのだから、さらに7万人もも将校が必要になるというのは解せない。
むしろ、将校削減案に反対してきた軍に対する配慮、と見るべきであろう。
これがセルジュコフ改革の後退を意味するのか、大統領選を前にした一時的な軍へのサービスに過ぎないのかを見極めていく必要がある。

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★統一航空機製造会社(OAK)のフョードロフ総裁更迭

1月31日、メドヴェージェフ大統領は、国営企業である「統一航空機製造会社(OAK)」のアレクセイ・フョードロフ社長を更迭すると発表した。
航空産業におけるおけるイノヴェーションの進展が充分でないというのがその理由である。
また、ヨルダンへの航空機納入契約の遅れが直接の原因であるとする『コメルサント』の解説も見られる。

OAKはロシア政府の方針で2006年に設立された航空産業連合体(詳しくは『軍事研究』誌2010年 8月号の拙稿を参照)。
フョードロフはRSK-MiGn出身で、航空産業内に公式・非公式の太いパイプを持つとされる(たとえば彼はイルクートの最大株主である)。
OAKでは設立当初から社長の座にあったが、今回ついに失脚することになった。
後任には、傘下のスホーイ・カンパニーで社長を務めるミハイル・ポゴシャン(OAK副社長を兼任)が就任する見込み。

この解任劇の背景には、プーチン政権に設立された巨大国営企業(国家コーポレーション)の非効率性に対するメドヴェージェフの強い不満があるようだ。
OAKに関して言えば、いくつかの部門で納期遅れが常態化している。
上記の『コメルサント』の記事で指摘されているヨルダン向けIl-76の納入や中国向けIl-76/78の納入遅れ(結局は契約破棄)、ロシア空軍向けSu-34戦闘爆撃機の納期遅れなどがその主な例として挙げられよう。
また、リージョナルジェット機SSJ-100や新型中型旅客機Tu-204MSなどの新世代機計画でもトラブルが続いている。

一方。、新たにOAK社長に任命されるミハイル・ポゴシャンはスホーイ設計局の出身。
いかにもおとなしそうな人だが実務家としての評価は高く、今後、OAKをどのように兼任していくのかが注目される。
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