★RS-24の配備状況とロシアの弾道ミサイル生産能力について

ロシア国防省の発表によると、RS-24「ヤルス」ICBMを装備するテイコヴォのロケット連隊は年内に完全編成に達する。
移動式ICBM連隊のミサイル定数は9基で、2009-2010年にかけてすでに6基が配備されているので、今年中にもう3基配備されることになる。


それにしても、あまりにも配備ペースが遅い。
RS-24のベースとなったRS-12M2「トーポリM」でさえこれまで年間6-11基程度は生産できていたことを考えると、RS-24の配備ペースはかなり低いと言える。1個連隊編成するのに3年かかっているようでは、ロシア軍首脳部が言うように、「RS-24が戦略核戦力の背骨を形成する」ようになるまでに相当の時間がかかることになるだろう。


RS-24の生産ペースの低さは、まだ配備初期段階であるからということもあろうが、より根本的な問題として考えられるのは、生産能力の限界である。
現在、ロシアには、クラスノヤルクスとヴォトキンスクの二つの弾道ミサイル工場が存在するが、前者は液体燃料型弾道ミサイルに特化しており、667BDRM型(いわゆるデルタⅣ型)原潜用の「シネーワ」潜水艦発射弾道弾(SLBM)の生産しか行っていない。
一方、後者のヴォトキンスクは固体燃料ミサイル工場で、前述のRS-12M2やRS-24に加え、「ブラワー」SLBMや「イスカンデルM」戦術弾道ミサイルの生産まで行っている。要するに、弾道ミサイル生産の負担がヴォトキンスクに過度に集中している状態と言える。
次期SLBMがマケーエフ設計局の「バルク」(液体燃料式)であれば、その分の負担をクラスノヤルスクに分散させられたはずだが、「バルク」が不透明な理由で開発中止にされ、代わって「ブラワー」の開発が決定されたためにそれもできなくなってしまった。
しかしロシアでは旧式ICBMが年間数十基という単位で退役し続けており、このままでは核戦力が縮小の一途をたどることになってしまう。


そこでロシア首脳部は最近になって、大規模な投資によってミサイル生産能力を倍増させようという方針を打ち出した。
プーチン首相によれば、今後3年間でヴォトキンスク工場を含む弾道ミサイル生産企業に150億ルーブル(約400億円)を投資し、このうちヴォトキンスク工場には17億ルーブル約46億円)が拠出されるという。
また、このような投資により、RS-24、「ブラワー」、「イスカンデルM」などの弾道ミサイルの生産を2013年以降、現在の倍に引き上げるとしている。


ただし、上の発言にはいくらか疑問も残る。
第一に、「現在の倍」というのはそもそもどのくらいの規模なのかという点だ。
2010年の調達実績をみると、弾道ミサイルの生産実績は27基となっている。
筆者が把握している範囲の機種別生産実績は、
 ・RS-24「ヤルス」×3
 ・RS-12M2「トーポリM」×6
 ・RSM-56「ブラワー」×3以上
 ・「イスカンデルM」×6ユニット(各ユニットはミサイル2基装備)
で合計24基であるから、実際は「ブラワー」か「イスカンデル」の生産数がもう少し多かったのだろう(「イスカンデル」は予備弾薬車を伴うので、常に生産数がランチャーよりも多めとなる)。
したがって、「現在の倍」というと、大体、55発くらいということになるだろうか。


第二に、これほどの増産は実際に可能なのかという問題がある。
米国のNuclear Thread Initiative (NTI) によると、ソ連時代のヴォトキンスク工場は最大で年間48基のRS-12M「トーポリ」を生産していた。さらにキャパシティの限界まで生産を行えば、「トーポリM」換算で最大80基生産可能であるとしている。
ただし、これは資金が潤沢で、熟練労働者も十分にそろっていればという話であろう。たかだか17億ルーブルの投資と、高齢化の著しい少数の労働者だけでどこまでこのような増産が可能であるのかは疑問符がつく。
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