★ロシア軍事データベース:核戦力

ロシア軍事データベース:核戦力

(1)核兵器産業
核兵器に関連する産業は集合的に「核兵器コンプレクス(ядерный-оружейный комплекс)」と呼ばれる。
核兵器コンプレクスに数えられる企業はいずれも国営企業である「連邦単一企業(FGUP)」と位置付けられ、原子力公社「ロスアトム」の傘下に入っている。
ロスアトムの公式サイトによると、核兵器コンプレクスに含まれる企業は次の通り。

ロシア連邦核センター 全露応用物理科学実験研究所(RFIaTs VNIIEF。ニジェゴロド州サロフまたはアルザマス-16)
  核弾頭の研究開発(理論研究から施策までの全サイクルに及ぶ)
ロシア連邦核センター 全露物理技術研究所(RFIaTs VNIITF。チェリャビンスク州スニジェンスクまたはチェリャビンスク-70)
  核弾頭の研究開発。VNIIEFの負担を軽減し、競争を刺激し、生残性を高める目的で設立
「生産合同(PO)マヤーク」(チェリャビンスク州オゼルスクまたはチェリャビンスク-65)
  プルトニウム・高濃縮ウランの生産(現在は停止)、核弾頭のプルトニウム・トリチウム部品の生産
「コンビナート エレクトロヒムプリボール(電気化学機器)」(スヴェルドロフスク州レースノイまたはスヴェルドロフスク-45)
  核弾頭の量産
「プリボールストロイチェリヌィ・ザヴォード(機器生産工場)」(チェリャビンスク州トレョフゴールヌィまたはズラトウスト-36)
  核弾頭の量産

このほかにも核兵器コンプレクスに含まれる企業は数多いが、ロスアトムの公式サイトで名指しされているのは以上の企業だけである。
ソ連時代に核兵器の生産に関わっていた企業のリストとしては、SIPRI(ストックホルム国際平和研究所)年鑑2002年版のオレグ・ブハーリンの業績に詳しい。
また、パーヴェル・ポドヴィグらがまとめた Russian Strategic Nuclear Forcesは、上記のブハーリンの業績を参照しつつ、より詳しい核兵器の開発・生産・配備・管理・廃棄などのサイクルについて明らかにしている。
いずれにしても現在のロシアでは兵器級ウランの生産もプルトニウムの生産も停止されており(ジェレズノゴルスク/クラスノヤルスク-26で稼働していた最後の兵器用プルトニウム生産炉が閉鎖されたのは2010年)、上記の企業の中でもPOマヤークも実際には核兵器用分裂物質の生産はすでに行っていない(核兵器用トリチウム部品等はまだ製造中?)。
しかし、ロシアは依然としてソ連時代に生産された大量の高濃縮ウラン(HEU)とプルトニウムを保有している。
その保有量は公表されていないが、ロシアは兵器級核物質の生産を停止した後も核弾頭搭載弾道ミサイルの生産を継続・拡大しており、十分なHEUとプルトニウムの備蓄があるものと考えられる。
(一例としてこのサイトでは、2008年時点で兵器に転用可能なロシアのHEU備蓄を約600MT(metric ton)と見積もっている

核兵器コンプレクスに投じられる予算の額については、2014年度連邦予算では378億9000万ルーブル(約1200億円)となっているが、これは機密指定解除部分だけの話であり、総額は明らかで無い。
一方、ロスアトムのキリエンコ総裁は、2013年の核兵器コンプレクスの仕事量が2012年に比べて22%増加し、売上が670億ルーブル増加したと述べており(2014年1月9日付けのRIA Novosti)、機密部分も含めた政府の出資はかなりの額に上ると考えられる(ただし核兵器コンプレクスに含まれる企業は必ずしも核兵器の開発生産だけに携わっているわけではなく、民生品の開発や国際的なウラン燃料の売却なども行っているため、推定はさらに困難である)。



(2)戦略核兵器
2011年に発効した米露戦略兵器削減条約(新START条約)の定期データ交換(半年に1回。毎年3月と9月に公表)によると、2013年9月時点までのロシアの戦略核戦力の推移は次の通りである。
核戦力推移

新STARTは第一次戦略兵器削減条約(START-1)と異なり、より詳しい核戦力の内訳を公表することを義務づけていないため(政府間の詳細なデータ交換自体は行われる)、以上の中身がどうなっているかについては推測に頼るほかない。
この分野で著名なのは(1)でも言及したパーヴェル・ポドヴィグで、国連軍縮研究所から極めて詳細なロシアの戦略核戦力見積もりを出している
これは上述した新STARTの不透明の中でなんとか戦略核戦力に関する透明性を保とうとする試みであり、ICBMのサイロひとつひとつの単位で綿密な把握を行った労作である。
また、同じポドヴィグが2014年1月になってから出した最新の見積もりによると、ロシアの戦略核戦力は次の通り。

戦略爆撃機 66機(核弾頭数百発)
 Tu-95MS×55機
 Tu-160×11機
SSBN  10-11隻(作戦配備6-7隻)/SLBM×128-144基
 プロジェクト955型×2隻(作戦配備0隻):R-30ブラワーSLBM×16基
 プロジェクト667BDRM型×6隻(作戦配備5隻):R-29RM SLBM×16基(弾頭4-10個)
 プロジェクト667BDR型×3隻(作戦配備1-2隻):R-29R SLBM×16基(弾頭3個)
ICBM 311基/弾頭1078発
 R-36M2×52基(弾頭10個)
 UR-100NUTTH×40基(弾頭6個)
 RS-12Mトーポリ×108基(弾頭1個)
 RS-12M2トーポリM×78基(弾頭1個)
 RS-24ヤルス×33基(弾頭4個)

(3)戦術核兵器
coming soon
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