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★ブルガーコフ国防次官の北方領土訪問

20日、ロシア国防省のドミトリー・ブルガーコフ(新聞ではブルガコフとも)国防次官(を中心とする代表団が国後島を訪問した。
代表団は国防省の人員約40名から成り、国後島と択捉島に駐屯する第18機関銃・砲兵師団を23日まで視察する予定。
国防省の公式見解によれば、これは定期検閲のひとつの過ぎず、師団の状況、特に兵士たちの生活環境をチェックする目的であるという。
以前にも紹介したとおり、ブルガーコフ次官は2008年以降、後方(兵站)担当の国防次官を務めており、兵站改革を主導してきた。いわば、兵站面でセルジュコフ国防相の改革を進めてきた人物と言える。
したがって、師団の生活環境チェックという名目もあながち的外れとは言えないものの、やはりそれだけで済まされるものでもないだろう。きちんと調べたわけではないが、わざわざ極東の島にまで国防次官クラスが出張ってくるのはかなり異例の筈である。


とはいえ、その政治的意義については大学や外務省やメディアの偉い人たちが既に詳しく解説しておられると思われるので、ここでは軍事的な意義について簡単に考察しておきたい。
まず、耳慣れない「機関銃・砲兵師団」という名称だが、これは一種の地域防御部隊で、他地域への機動性をあまり考慮せず、増援部隊が来るまでその地域を固守することを任務としている。
2008年までロシア軍には5個の「機関銃・砲兵師団」が編成されていたが、セルジュコフ改革によって部隊の旅団化が進んだ結果、第18機関銃・砲兵師団を除く4個師団はすべて旅団化された。
要するに、件の師団は、ロシア陸軍に残った唯一の師団(機関銃・砲兵師団であるか否かを問わず)なのである。これはやはり、北方領土を軍事的に固守するという政治的意思を示すものと考えた方がよいだろう。
戦車、歩兵、砲兵、防空、補給、鉄道部隊まで一律に「旅団」という共通性の高いユニットに規格化するというのがセルジュコフ改革の一つの眼目であったから、その原則を曲げてまで師団編成を残した意味は大きい。


さらにロシアは先般、フランスから2隻の「ミストラル」級強襲揚陸艦を導入することを決定した。
その1番艦は太平洋艦隊に配備されると考えられているが、マカロフ参謀総長は依然、その目的を「クリル諸島(北方領土)が奪われた場合の奪回用」などと答えていた。
また、ミストラルの配備に合わせて極東の第155海軍歩兵旅団は装備近代化を進めているとも伝えられ、北方領土防衛に対するロシアの動きは活発化していると言える。
北方領土の兵力は現在、3500人程度まで減少していると見られるが、今回のブルガーコフ次官訪問で何らかの人員・装備の強化が打ち出されるかどうかが注目されよう。


ただし、『産経新聞』1月20日付の記事で言われているような、「日本を「仮想敵」として北方領土の軍備を再重視する姿勢を鮮明」という言い方はやや誤解を招くように思う。
同記事では、①2010年2月に公表された『軍事ドクトリン』の内容と②同年に極東で実施された「ヴォストーク2010」演習をその根拠としている。
しかし、①については、そもそも「ロシアに対する領土要求」という項目は前バージョンの『軍事ドクトリン』に較べてランクが下がっているし、②の「ヴォストーク2010」演習はロシア東部の19カ所で実施された演習のうち1カ所が北方領土であったというに過ぎない。
(この辺については、『軍事研究』誌9月号で書かせていただいた『軍事ドクトリン』についての記事や、同誌10月号で書かせていただいた「ヴォストーク」演習についての記事などご参照願えればと思います)


ところで、この第18機関銃;砲兵師団の戦力であるが、warfare.ruによれば、第46、第49、第484の3個機関銃・砲兵連隊の編成となっている。
以前は国後に46と49が居て、択捉には戦車大隊だけということだったが、この戦車大隊が484連隊へと格上げされたのかもしれない。なお、この戦車大隊(連隊?)は2010年にT-55からT-80BVへと装備改編を行っている。
一方、第46のほうは第264機関銃・砲兵大隊を中心としており、実質的に大隊規模と見られる。


第18機関銃・砲兵師団について分かっていること(特に信頼できる情報源で)が非常に少ない。
今回のブルガーコフ次官訪問を機に、現状や今後についていくらかでも情報が出てくればありがたいと考える次第。
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